親の介護が始まったとき、多くの方が最初にぶつかるのが「仕事をどうするか」という問題です。「介護休業って取れるの?」「休暇とどう違う?」「上司にどう伝える?」という疑問のまま、結局自己流で対応して有給を使い切ってしまう、最悪の場合いきなり離職してしまうご家族を多く見てきました。
実は日本には介護休業・介護休暇・短時間勤務などの法定制度が揃っており、雇用保険からの給付金まで用意されています。知っているか知らないかで、収入は数十万〜100万円単位で変わります。この記事では、制度の違いから申請手順、上司への伝え方までを実務レベルで整理します。
介護休業・介護休暇・有給休暇の違いを表で整理
| 項目 | 介護休業 | 介護休暇 | 有給休暇 |
|---|---|---|---|
| 取得日数 | 対象家族1人につき 通算93日 | 年5日(対象家族1人) 年10日(2人以上) | 勤続年数に応じて 10〜20日 |
| 取得単位 | 最大3回まで分割可 | 1日/半日/時間単位 | 1日/半日/時間単位 |
| 給付・賃金 | 無給 (雇用保険から給付金) | 原則無給 (会社規定による) | 有給 |
| 給付金 | 休業前賃金の67% | なし | ― |
| 取得理由 | 2週間以上の常時介護が必要 | 通院付添、手続き、世話 | 制限なし |
| 適用法 | 育児・介護休業法 | 育児・介護休業法 | 労働基準法 |
💡 使い分けのコツ
・スポット対応(通院付添、認定調査同席、書類提出)には介護休暇
・体制構築期のまとまった休みには介護休業
・有給は最後の砦として温存(リフレッシュにも回す)
介護休業を取れる条件と対象家族
雇用保険の被保険者要件
介護休業給付金を受けるには、以下を満たす必要があります。
- 雇用保険の被保険者であること
- 休業開始前の2年間に、賃金支払い基礎日数が11日以上ある月が12か月以上
- 有期雇用の場合、休業開始時点で同一事業主に1年以上雇用されていること
正社員はもちろん、パート・契約社員・派遣社員でも条件を満たせば対象になります。
「2週間以上の常時介護」の判断基準
介護休業の対象は、2週間以上にわたって常時介護を必要とする状態の家族がいる場合。要介護2以上が一つの目安ですが、厚生労働省の判定基準では食事・排泄・歩行・認知症などの12項目の状態で判断します。要介護認定がまだ出ていなくても、医師の意見書で対象となる場合があります。
対象家族の範囲
介護休業の対象となるのは、以下の家族です。
- 配偶者(事実婚を含む)
- 父母(養父母を含む)
- 子(養子を含む)
- 配偶者の父母
- 祖父母、兄弟姉妹、孫
同居・扶養要件は廃止されているため、離れて暮らす親でも対象になります。
介護休業の申請手順【会社→ハローワーク】
会社への申し出(書面・期日)
休業開始予定日の2週間前までに書面で申し出るのが原則です。会社所定の様式があればそれを使用、なければ自分で作成します。
⚠️ 申し出書の必須項目
・申出年月日
・自分の氏名・所属
・対象家族の氏名・続柄・生年月日
・常時介護を必要とする状態の概要
・休業開始予定日と終了予定日
必要書類一覧と入手先
| 書類 | 入手先 |
|---|---|
| 介護休業申出書 | 会社 |
| 介護休業給付金支給申請書 | ハローワーク or 会社 |
| 賃金台帳・出勤簿の写し | 会社が用意 |
| 住民票の写し(対象家族との続柄証明) | 市区町村役所 |
| 要介護状態を確認できる書類 (介護保険被保険者証、医師の意見書等) | 本人 or 医療機関 |
給付金支給までの期間
給付金は休業終了後にまとめて支給されます(分割取得の場合は各回ごと)。申請から振込までは2か月程度。生活費の流動性を考えて、休業中は預金や有給を併用するのが現実的です。
分割取得(最大3回まで)の活用法
93日を一気に取らず、最大3回まで分割できます。たとえば次のような使い方が現実的です。
- 1回目:入院〜退院体制構築(30日)
- 2回目:施設入所準備(20日)
- 3回目:看取り期(43日)
合計が93日以内であれば、何年にもまたがって使うこともできます。
上司・人事への伝え方|例文テンプレート集
口頭で伝えるときの第一声
「お時間よろしいでしょうか。実は親の介護のことでご相談があります。先週、父が緊急入院しまして、退院後の介護体制を整える必要が出てきました。介護休業制度の利用を検討したいのですが、まず○○さん(上司)にご相談したくお時間をいただきました。」
ポイントは以下3点。
- 事情を簡潔に伝える
- 「相談」の形で切り出す(断定的に休む宣言はしない)
- 業務調整への配慮を後段で示す
メール文面テンプレ(業務調整含む)
件名:介護休業取得のご相談
○○部長
お疲れ様です。○○部の○○です。
表題の件、ご相談したくメールいたします。父(83歳)が4月15日に脳梗塞で緊急入院し、退院後は要介護状態となる見込みです。
退院後の介護体制構築のため、5月10日〜6月10日(30日間)の介護休業取得を希望しております。現在担当している以下案件は、休業前に引継ぎ可能と考えております。
・○○プロジェクト:○○さんへの引継ぎ案を作成済み
・△△業務:マニュアル化のうえ、共有予定
・□□案件:4月末までに区切りをつける見込みつきましては、来週中にお打ち合わせのお時間をいただけますでしょうか。
ご多忙のところ恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
引き止められた・難色を示されたときの対応
介護休業は労働者の権利として法律で定められており、会社は原則として拒否できません。難色を示された場合は、以下の順で対応してください。
- 制度の根拠(育児・介護休業法)を冷静に説明
- 業務影響を最小化する案を提示
- それでも難色が続くなら、人事部または労働局に相談
同僚への共有範囲
「同情されたくない」「特別扱いされたくない」という気持ちは自然ですが、業務の引継ぎが必要な相手には事情を簡潔に共有したほうがスムーズです。詳細な家族構成や病状までは話す必要はありません。
介護休業中にやっておきたいこと【93日の使い方】
1〜2週目:体制構築
- 地域包括支援センターと初回面談
- 要介護認定の申請(入院中に始めていれば結果待ち)
- ケアマネ選定と初回面談
- 退院後の住環境整備(手すり、段差解消)
3〜8週目:サービス開始と安定化
- 訪問介護、デイサービスの利用開始
- 福祉用具の搬入
- 家族間で役割分担を文書化
- 仕事復帰後の働き方を上司と相談(時短、テレワーク等)
9〜13週目:復職準備と両立計画
- 業務の引継ぎ復元
- 介護タクシー、配食サービスなど補完的サービスの確認
- 緊急時の連絡フロー確立
- 復職日の最終調整
介護休業を「取らない方がよい」ケースもある
介護離職に直結するパターン
介護休業を取った結果、休業終了時に「やはり離職するしかない」と判断するケースがあります。これは休業中に介護体制を整える努力をしなかったことが原因のことが多いです。介護休業は休むためではなく、仕事を続けるための準備期間として使ってください。
短時間勤務制度・テレワークとの比較
会社の規程によっては、介護のための短時間勤務制度(時短)・始業終業時刻の繰上げ繰下げ・テレワークが用意されています。常時介護ではなく日々のサポートが必要なケースなら、休業よりこちらが現実的です。
介護離職前に検討すべきこと


介護福祉士が現場で見てきた|介護休業を活かせた家族/使えなかった家族
介護福祉士 SEDO(経験7年)
施設で家族対応をしていると、介護休業を上手に使ったご家族とそうでないご家族の差は明確に表れます。
活かせるご家族は、休業中にケアマネと密に連携し、サービス体制を作り込み、復職後を見据えた段取りをしています。一方、休業を取ったものの本人にずっと付き添い、結局体制を作らないまま復職してしまい、復職後すぐにまた壁にぶつかるご家族も少なくありません。
介護休業は「離れる時間」ではなく「仕組みを作る時間」だと位置づけてください。
まとめ:制度を知っているだけで100万円差がつく
介護休業給付金は最大で約賃金の67% × 93日分。月収30万円の方なら、フルで取得すれば約60万円の給付があります。これに加えて、介護休暇の活用、短時間勤務、有給の戦略的使用、医療費控除や高額介護サービス費の活用を合わせれば、年単位で100万円以上の家計差が生まれます。
「知らなかった」だけで損をするのが介護のお金の世界です。倒れた直後から、制度を最大限使う前提で動いてください。
▶ 次のステップ
・介護休業給付金はいくらもらえるか → 介護休業給付金はいくらもらえる?
・介護休業は何日まで取得できるか → 介護休業は何日まで取得できる?
・親が倒れた直後のロードマップ
・介護離職を防ぐ → 介護離職は本当に防げるのか?
よくある質問
Q:介護休業はパートでも取得できますか?
A:雇用保険の被保険者で、休業開始前2年間に賃金支払い基礎日数が11日以上ある月が12か月以上ある等の条件を満たせば、パート・契約社員・派遣社員でも取得できます。同一事業主に1年以上雇用されていることも条件です。
Q:介護休業は何回まで分割できますか?
A:対象家族1人につき通算93日を、最大3回まで分割して取得できます。たとえば入院〜退院体制構築で30日、施設入所準備で20日、看取り期に43日、というような分割の使い方ができます。合計93日以内であれば数年にわたっても取得可能です。
Q:介護休業給付金はいつ振り込まれますか?
A:休業終了後にまとめて支給されます(分割取得の場合は各回ごと)。申請から振込までは2か月程度かかります。給付額は休業前賃金の67%相当。生活費の流動性を考えて、休業中は預金や有給を併用するのが現実的です。
📚 出典・参考
・厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」
・厚生労働省「介護休業給付の内容と支給申請手続」
・ハローワークインターネットサービス
※本記事の制度情報は2026年4月時点。最新の制度改正は公式情報をご確認ください。



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