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訪問介護で頼めること・頼めないこと完全リスト|身体介護と生活援助の境界・グレーゾーンの実例【2026年版】

介護現場の実践・ノウハウ

「ヘルパーさんに庭の草むしりを頼んだら断られた」「家族の分の食事も作ってもらえると思っていた」――現場で家族からよく聞く、訪問介護のすれ違いです。訪問介護は便利なサービスですが、介護保険の枠組みのため頼めることと頼めないことが厳密に決まっています。家族が事前に知っておかないと、予想外のトラブルや不満に繋がります。

2024年介護報酬改定では訪問介護の基本報酬がマイナス改定となり、事業所運営は厳しさを増しています。「サービス範囲を超える依頼が通りにくくなった」という声も現場で増えており、家族側が境界線を理解して依頼することの重要性が高まっています。

本記事では、介護福祉士として訪問介護の現場で多くの調整に関わってきた経験をふまえ、2026年4月時点の制度に基づいて訪問介護で頼めること・頼めないこと・グレーゾーンの実例と対処を完全整理します。最新の運用は、ケアマネ・訪問介護事業所・市区町村窓口に必ずご確認ください。

  1. 訪問介護の基本|2つのサービス区分
    1. 身体介護と生活援助
    2. 通院等乗降介助は別枠
  2. 身体介護で頼めること
    1. 排泄介助
    2. 食事介助
    3. 入浴介助
    4. 移動・体位変換
    5. 更衣介助
    6. 整容
    7. 服薬介助
    8. 身体介護に伴う関連動作
  3. 生活援助で頼めること
    1. 調理
    2. 洗濯
    3. 掃除
    4. 買い物・薬の受け取り
    5. ベッドメイキング
    6. その他日常的な家事
  4. 頼めないこと|介護保険対象外
    1. 家族のための家事
    2. 日常的でない家事
    3. 本人が一人ではできないが、本人の生活上必要不可欠と言えないもの
    4. 医療行為
    5. 受診の判断・薬の管理
    6. 生命・身体の安全に関わる重大な判断
  5. グレーゾーン|現場で迷う実例
    1. 同居家族がいる場合の生活援助
    2. 食事を「本人分」と「家族分」を分ける
    3. 掃除の範囲
    4. 通院付き添い
    5. 「ついで」を頼む
  6. 頼めないことを補う方法
    1. 介護保険外の家事代行サービス
    2. 訪問介護事業所の自費メニュー
    3. シルバー人材センター
    4. 自治体の高齢者支援事業
    5. NPO・ボランティア団体
    6. 訪問看護で医療的対応
  7. 頼みたいことを整理する|事前準備のコツ
    1. 「本人のため」か「家族のため」かを区別
    2. 頻度と所要時間を見積もる
    3. 区分支給限度額の枠を意識
    4. ケアマネに「具体的な困りごと」を伝える
  8. 断られたとき・トラブル時の対処
    1. 事業所と話し合う
    2. ケアマネに相談
    3. 市区町村窓口に確認
    4. 苦情・相談窓口
  9. 介護福祉士から見た|訪問介護を上手に使う家族の特徴
  10. まとめ|「境界線を知る」ことが活用の第一歩
  11. よくある質問

訪問介護の基本|2つのサービス区分

身体介護と生活援助

訪問介護は「身体介護」と「生活援助」の2つの区分に分かれており、料金体系も別です。

区分主な内容料金(30分の1割負担)
身体介護本人の体に直接触れる介助約260〜400円
生活援助本人の日常生活に必要な家事約180〜220円

通院等乗降介助は別枠

「通院等乗降介助」は身体介護・生活援助とは別の区分で、いわゆる介護タクシーの介護保険部分です。

介護タクシーの使い方完全ガイド|介護保険適用と自費の違い・料金・予約方法【2026年版】
介護タクシーの使い方を介護福祉士が解説。介護保険適用(通院等乗降介助)と自費の違い、料金体系、予約のコツ、車いす・ストレッチャー対応、介護保険外の福祉タクシー・福祉有償運送までを2026年最新情報で整理します。

身体介護で頼めること

身体介護は、本人の体に直接触れる介助が中心。本人の安全と生活の質に直結する内容が広く含まれます。

排泄介助

  • トイレへの誘導・介助
  • おむつ交換
  • ポータブルトイレの設置・使用介助・後始末
  • 陰部洗浄

食事介助

  • 食事の準備(介助を含む配膳)
  • 食べさせる介助
  • 嚥下を確認しながらの介助
  • 水分補給
  • 後片付け(介助に伴う範囲)

入浴介助

  • 入浴前の準備(着替え準備・浴室の準備)
  • 浴室への移動介助
  • 洗髪・洗体・洗顔
  • 入浴中の見守り
  • 入浴後の着替え・水分補給
  • 清拭(入浴ができない場合)

移動・体位変換

  • ベッドから車いすへの移乗
  • 体位変換(褥瘡予防)
  • 歩行介助
  • 外出時の付き添い(一部)

更衣介助

  • パジャマから普段着への着替え
  • 下着・靴下の着脱
  • 季節に応じた衣類選び

整容

  • 洗面・歯磨き介助
  • 髪のセット・くしゃ整え
  • 髭剃り(電気カミソリ)
  • 爪切り(医療行為に該当しない範囲)

服薬介助

  • 処方薬の声かけ・確認
  • 服薬の見守り
  • 本人が服薬できないときの介助
  • ※薬の管理(処方変更・処方依頼)は医療職の領域

身体介護に伴う関連動作

「身体介護に直接関連する家事」は身体介護として算定される場合があります。例:

  • 食事介助に伴う配膳・後片付け
  • 排泄介助に伴うシーツ交換
  • 入浴介助に伴う浴室掃除(介助に直接関連する範囲)

生活援助で頼めること

生活援助は、本人の日常生活に必要な家事が対象。「本人のため」であることが原則です。

調理

  • 本人の食事の調理
  • 配膳
  • 後片付け(食器洗い・キッチン整理)
  • 嚥下に応じた食形態の調整

洗濯

  • 本人の衣類・タオルの洗濯
  • 洗濯物の干し・取り込み
  • たたみ・収納
  • アイロンがけ(必要時)

掃除

  • 本人が日常使う部屋の掃除
  • トイレ・浴室の掃除(一般的な範囲)
  • ゴミ出し

買い物・薬の受け取り

  • 近隣のスーパー・薬局での買い物代行
  • 処方薬の受け取り
  • 日用品の購入

ベッドメイキング

  • シーツ交換
  • 布団・枕カバーの交換
  • 掛け布団のセッティング

その他日常的な家事

  • ゴミ出し
  • 郵便物の整理
  • 簡単な伝言・連絡

頼めないこと|介護保険対象外

次の内容は原則として訪問介護では対応できません。介護保険外サービスや他の手段を併用する必要があります。

家族のための家事

  • 家族の食事の調理
  • 家族の洗濯物の洗濯
  • 家族が使う部屋の掃除
  • 家族が使うトイレ・浴室の掃除
  • 家族の買い物

本人専用と家族共用が混在する場合(同じキッチンで食事を作る等)は、現場でグレーゾーンとして扱われることが多いですが、原則は「本人分のみ」です。

日常的でない家事

  • 大掃除
  • 窓拭き
  • 庭の草むしり・植木の手入れ
  • 正月料理・おせちの準備
  • 冠婚葬祭の準備
  • 季節の衣替え(大規模な場合)
  • 家具の移動を伴う模様替え

これらは「日常生活に最低限必要な家事」を超えるため、介護保険外。

本人が一人ではできないが、本人の生活上必要不可欠と言えないもの

  • ペットの散歩・餌やり・トイレ掃除
  • 家族のお墓参り
  • 趣味・娯楽の付き添い
  • 友人宅への訪問

医療行為

  • 注射
  • 点滴
  • 褥瘡の医学的処置
  • インスリン注射
  • たん吸引(医療資格が必要)
  • 経管栄養の管理

これらは訪問看護または家族が担当します。一部、特定行為研修を修了したヘルパーがたん吸引・経管栄養を行えるようになっていますが、限定的。

受診の判断・薬の管理

  • 本人の症状から受診を判断
  • 処方薬の変更依頼
  • 薬の一包化・配薬
  • ※「お薬カレンダーへのセット」は事業所判断・自治体判断

生命・身体の安全に関わる重大な判断

  • 救急要請の単独判断
  • 転倒等の事故処理
  • 本人の意思決定の代行

グレーゾーン|現場で迷う実例

同居家族がいる場合の生活援助

家族と同居している場合、生活援助は「家族が家事を行うことが困難」と認められない限り原則として算定できません。例外として認められるのは:

  • 家族が日中仕事で不在
  • 家族自身が病気・障害で家事困難
  • 家族が遠方の親族で訪問頻度が低い
  • 家族関係が著しく悪く協力が得られない

これらに該当しないと判断された場合、生活援助は使えません。同居家族の協力を前提としたケアプランを組むことになります。

食事を「本人分」と「家族分」を分ける

同じキッチンで食事を作るとき、本人分と家族分を厳密に分けるのは現実的でない場面も多々あります。現場では:

  • 本人分のみ調理(家族は別途自分で)
  • 本人分を中心に調理し、家族はおこぼれ
  • 調理工程を本人中心に組む

といった運用がされていますが、明確に「家族分の食事を頼む」のは介護保険外です。

掃除の範囲

本人が日常使う居室・トイレ・浴室は対象。一方で、家族用の部屋・玄関の家族の靴・家族用の冷蔵庫整理などは対象外。「家全体の掃除」ではなく「本人が使う範囲の掃除」が原則。

通院付き添い

通院等乗降介助(介護タクシー部分)は介護保険適用。院内の付き添い・受診中の補助は原則対象外です。例外として「認知症で意思疎通が困難」「医師の指示が伝わらない」等の理由で、ヘルパーの付き添いが必要不可欠と認められれば身体介護として算定できる場合があります。判断はケアマネ・自治体によります。

「ついで」を頼む

家族から「掃除のついでに、家族の食器も洗ってほしい」「買い物のついでに自分の薬も取ってきてほしい」と頼まれることがありますが、これらは原則として断られます。事業所にとってもサービス範囲外で、ヘルパーが個人的に応じると問題になりやすい。

頼めないことを補う方法

介護保険外の家事代行サービス

民間の家事代行(CaSyやカジタクなど)は、介護保険の枠を気にせず家族の家事も含めて自由に依頼可能。料金は1時間2,500〜4,000円程度。介護保険サービスと併用すれば、家族の生活負担を大幅に軽減できます。

訪問介護事業所の自費メニュー

多くの訪問介護事業所は「介護保険外サービス」「自費メニュー」を提供しています。同じヘルパーが介護保険適用範囲を超えた依頼に応じる仕組み。料金は1時間2,000〜3,500円程度で、介護保険適用と組み合わせやすい。

シルバー人材センター

市区町村のシルバー人材センターでは、高齢者向けに低料金の家事支援・庭仕事・話し相手などを提供。1時間1,000〜1,500円程度。地域差あり。

自治体の高齢者支援事業

市区町村独自の「軽度生活援助事業」「高齢者見守り」などで、介護保険外の支援を低料金または無料で提供している自治体があります。地域包括支援センターに「使えるサービスを全部教えてほしい」と相談を。

NPO・ボランティア団体

地域のNPOが提供する有償ボランティア(時間500〜1,500円程度)も選択肢。庭仕事・大掃除・話し相手などに対応。

訪問看護で医療的対応

たん吸引・褥瘡処置・点滴などは訪問看護で対応。介護保険または医療保険適用で、必要に応じてケアマネ・主治医と相談して導入。

在宅医療の使い方完全ガイド|訪問診療・往診・訪問看護の違いと費用【2026年版】
在宅医療の仕組みを介護福祉士が2026年最新情報で解説。訪問診療と往診の違い、 訪問看護ステーションの選び方、24時間対応の意味、費用・医療保険と介護保険の 使い分け、依頼までの流れまで、家族が知りたい論点を整理しました。

頼みたいことを整理する|事前準備のコツ

「本人のため」か「家族のため」かを区別

依頼内容を整理する際、まず「本人のための援助」か「家族の家事の代行」かを区別。本人のためなら介護保険適用、家族のためなら介護保険外と頭の中で仕分け。

頻度と所要時間を見積もる

  • 毎日必要なこと
  • 週数回で足りること
  • 月1回程度のこと
  • 季節ごとのスポット対応

頻度が高い項目から介護保険のケアプランに位置づけ、頻度の低いスポット対応は介護保険外で都度依頼する形が現実的。

区分支給限度額の枠を意識

訪問介護も区分支給限度額の枠内でカウントされます。デイサービス・ショートステイ等と組み合わせるため、訪問介護に何時間かを家族・ケアマネで配分する判断が必要。

介護保険で使えるサービス完全マップ|在宅・通所・短期・施設のすべてを要介護度別に整理【2026年版】
介護保険で使えるサービス一覧

ケアマネに「具体的な困りごと」を伝える

「ヘルパーさんに何をしてもらうか」を抽象的に決めるのではなく、「火曜は風呂介助、木曜は買い物代行+食事準備、土曜は外出付き添い」と具体的な困りごとベースで組むのがコツ。

断られたとき・トラブル時の対処

事業所と話し合う

「これはやってもらえない」と言われた依頼が、本当に介護保険外なのか、それとも事業所の判断・運用上の問題なのかを確認。サービス提供責任者と相談すれば、別の方法(自費メニュー・別ヘルパー)で対応してくれる場合があります。

ケアマネに相談

事業所との関係がうまくいかない、サービス範囲に納得できない場合は、ケアマネに相談を。場合によっては別の事業所への変更も検討。

市区町村窓口に確認

「他の自治体ではやってもらえる」「以前はOKだった」など運用面の疑問は、市区町村の介護保険担当窓口で正確な見解を確認できます。

苦情・相談窓口

  • 市区町村介護保険担当窓口
  • 都道府県国民健康保険団体連合会(国保連)
  • 地域包括支援センター
  • 事業所の苦情受付窓口

介護福祉士から見た|訪問介護を上手に使う家族の特徴

介護福祉士 SEDO(経験7年)

訪問介護を上手に使えるご家族には3つの共通点があります。「本人のため」と「家族のため」を区別している、介護保険外サービスも併用している、ヘルパーとの関係を大切にしている――この3点です。

逆に困りやすいご家族は、次のような傾向があります。

  • 「全部頼める」と思って依頼の境界線を理解していない
  • 家族の家事もヘルパーがやって当然と思っている
  • ヘルパーへの態度が雑になり関係性が悪化
  • 不満を事業所に伝えず溜め込む
  • ケアマネとサービス範囲をすり合わせていない

ヘルパーは家族介護者の強い味方であって、何でも頼める便利屋ではありません。制度の枠を理解した上で、頼めない部分は介護保険外サービスや家族で補う発想で、訪問介護の価値を最大化してください。

そして、ヘルパーは多くの場合、家族以上に親身に本人を見守ってくれる存在です。「どうもありがとう」「助かってます」の一言が、ヘルパーのモチベーションと家族との連携の質を大きく上げます。

まとめ|「境界線を知る」ことが活用の第一歩

本記事の要点を整理します。

  • 訪問介護は身体介護と生活援助の2区分+通院等乗降介助の別枠
  • 身体介護は本人の体に直接触れる介助、生活援助は本人の日常家事
  • 家族分の家事・大掃除・庭仕事・ペット世話などは介護保険外
  • 同居家族がいる場合の生活援助は条件付き
  • 院内付き添い・医療行為は原則対象外
  • 頼めない部分は家事代行・自費メニュー・シルバー人材・自治体支援で補う
  • ヘルパーとの関係を大切にし、サービス提供責任者・ケアマネと連携

訪問介護はうまく使えば家族介護者の生活を大幅に楽にしますが、「何でも頼める」ではなく「頼めることと頼めないことを知って戦略的に使う」のが現場の鉄則です。事前に境界線を理解して、ケアマネと一緒にサービス組成を考えてください。

▶ 次のステップ

・在宅介護サービスの種類と選び方 → 在宅介護サービスの種類と選び方
・介護保険で使えるサービス完全マップ → 介護保険で使えるサービス一覧
在宅医療と訪問診療
・介護タクシーの使い方 → 介護タクシーの使い方完全ガイド
・ケアマネジャーの選び方 → ケアマネジャーの選び方・探し方

よくある質問

Q:訪問介護で「家族の分の食事」を作ってもらうのは頼めますか?
A:原則として頼めません。訪問介護の生活援助は「本人のための援助」が前提で、家族の食事を一緒に作る・家族の洗濯物を一緒に洗うことは介護保険適用外です。同居家族がいる場合は「家族が普通にできない理由」がない限り生活援助そのものが受けられないこともあります。家族分の家事を頼みたい場合は、介護保険外サービス(家事代行・全額自費の訪問介護プラスサービス)を利用するか、訪問介護事業所に「自費メニュー」があるか相談してください。

Q:訪問介護で病院の付き添いはしてもらえますか?
A:通院時の自宅から病院までの送迎・乗降介助は「通院等乗降介助」(介護タクシー)として介護保険適用ですが、病院内での待ち時間や受診中の付き添いは原則として介護保険対象外です。例外として「医師の指示や病院の構造上、家族や事業所による付き添いが必要不可欠」と認められる場合は身体介護として算定できることもありますが、自治体・ケアマネの判断によります。家族同行が難しい場合は、自費の付き添いサービスや介護保険外の家事代行を組み合わせるのが現実的です。

Q:ペットの世話や庭の手入れは頼めますか?
A:原則として介護保険適用外です。生活援助は「日常生活に最低限必要な家事」が範囲で、ペットの散歩・餌やり・庭の草むしり・大掃除・正月料理の準備・冠婚葬祭の準備などは「日常的でない援助」として対象外になります。介護保険外の家事代行サービスや、自治体の高齢者支援事業、シルバー人材センター、NPOの生活支援などを組み合わせて対応するのが定石。事業所によっては自費メニューでこれらに対応している場合もあるため、ケアマネに「介護保険外でも頼める方法」を相談してください。

📚 出典・参考

・厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
・厚生労働省「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」
・厚生労働省「介護報酬改定」(2024年4月)
・全国訪問介護事業者協会
・各市区町村介護保険担当窓口
※運用は事業所・自治体で差があるため、最新情報はケアマネジャー・訪問介護事業所・市区町村でご確認ください。

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