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介護離職を選ぶ前に知ってほしい現実|年収・キャリア・健康・社会保険の長期影響【2026年版】

体験談・こころの話

「親の介護で仕事を辞めるしかない」――そう思い詰めるご家族の声を、現場で何度も聞いてきました。けれど介護離職を選んだ多くの方が、数年後に「本当に辞めるべきだったのか」と振り返ります。離職は介護を楽にするとは限らず、年収・キャリア・健康・年金の長期的なダメージを残すのが現実です。

総務省「就業構造基本調査」によれば、介護離職者は年間約10万人。一方、政府は「介護離職ゼロ」を掲げ、2025年4月の育児・介護休業法改正で企業の支援義務を強化するなど、辞めずに続ける環境整備が進んでいます。

本記事では、介護福祉士として家族介護者と関わってきた経験と、2026年4月時点の最新制度をふまえ、介護離職を選ぶ前に知ってほしい現実と、続けるための具体策を整理します。

  1. 介護離職の長期的な影響|辞めた後に何が起きるか
    1. 年収は離職前の6〜7割に下がる
    2. キャリアの中断は復元しにくい
    3. 健康への悪影響
    4. 厚生年金への影響
    5. 介護終了後の再就職の困難
    6. 本人にとっても良いとは限らない
  2. 2025年4月改正|育児・介護休業法の最新ポイント
    1. 介護に直面した労働者への個別周知・意向確認の義務化
    2. 40歳到達時の情報提供の努力義務
    3. 介護のためのテレワーク導入の努力義務
    4. 研修・相談体制の整備義務
  3. 仕事を続けながら介護する|使える制度
    1. 介護休業(最大93日・給付金あり)
    2. 介護休暇(年5日/対象家族2人以上は10日)
    3. 短時間勤務制度(93日とは別枠で利用可能)
    4. 所定外労働の制限・時間外労働の制限
    5. 深夜業の制限
    6. 転勤への配慮
  4. 仕事と介護の両立を支えるサービス再設計
    1. 働きながら介護する5つの軸
    2. ケアマネに「働き方」を伝える
    3. 遠距離介護の組み立て方
  5. 「離職するしかない」と感じたときに見直すこと
    1. 介護休業を最大限活用したか
    2. 短時間勤務に切り替えたか
    3. サービスを十分に組み合わせたか
    4. 兄弟との分担を再協議したか
    5. 会社の制度を完全に把握したか
    6. 副業・複業の選択肢はないか
  6. 本当に離職を選ぶ場合の備え
    1. 失業給付の受給
    2. 健康保険の選択
    3. 年金の任意加入・付加年金
    4. 介護期間後の再就職に備える
    5. 経済的シミュレーション
  7. 介護福祉士から見た|離職を防げた家族の共通点
  8. まとめ|「辞める」より「変える」を最初に試す
  9. よくある質問

介護離職の長期的な影響|辞めた後に何が起きるか

年収は離職前の6〜7割に下がる

各種調査によれば、介護離職者の再就職時の平均年収は離職前の60〜70%に減少します。理由は次の通り。

  • 正社員から非正規雇用への転換が多い
  • ブランクによる職能評価の低下
  • 40〜50代の転職市場では希望年収が通りにくい
  • 介護を理由にした柔軟な働き方を求めると条件が下がる

キャリアの中断は復元しにくい

40〜50代でのキャリア中断は、職位・専門性・人脈すべてに影響します。同じ会社・同じ職位に戻るのは極めて難しく、「キャリアラダーから降りる」決断と等しいのが実態です。

健康への悪影響

「離職すれば介護に専念できて自分の健康も守れる」と思いがちですが、実際は逆です。

  • 社会との接点が減りうつ傾向が強まる
  • 収入減のストレスが長期化
  • 介護一辺倒で運動・娯楽の機会が減る
  • 「仕事を辞めたのにうまく介護できない」という自己否定

結果として介護うつになるリスクは在職継続より高いというデータもあります。

厚生年金への影響

厚生年金は加入期間と保険料納付額で受給額が決まるため、離職して国民年金のみになった期間は将来の年金額が大きく減ります。たとえば50歳で離職して60歳まで国民年金のみになると、生涯受け取る年金が数百万円単位で減少するケースも珍しくありません。

介護終了後の再就職の困難

介護期間平均は約5年1か月。介護終了時にはすでに50代後半〜60代になっていることが多く、正社員での再就職は極めて難しくなります。「介護が終わったら働けばいい」という見通しは現実的ではありません。

本人にとっても良いとは限らない

意外に思われるかもしれませんが、家族介護者が離職して付きっきりになることが、本人にとってベストとは限りません。

  • 家族介護者の精神状態が悪化すると本人にも伝わる
  • 外部サービスを使わないと本人の社会的刺激が減る
  • 家族の経済不安は本人にも罪悪感を与える
  • 「私のせいで仕事を辞めさせた」と本人が苦しむ

2025年4月改正|育児・介護休業法の最新ポイント

2025年4月の改正で、介護関連の支援制度が大幅に強化されました。主要な変更点は次の通り。

介護に直面した労働者への個別周知・意向確認の義務化

労働者から介護の申し出があった場合、事業主は両立支援制度(介護休業・介護休暇・短時間勤務等)について個別に周知し、利用意向を確認する義務を負います。会社が「制度を知らせてくれない」事態が制度上起きにくくなりました。

40歳到達時の情報提供の努力義務

従業員が40歳に達した時点で、介護に直面する前から両立支援制度の情報を提供する努力義務が事業主に課されました。介護を意識し始める世代に対する企業の予防的支援が広がる流れです。

介護のためのテレワーク導入の努力義務

介護を理由にテレワークができる環境整備が事業主の努力義務化。「家から介護対応できる」が制度的に後押しされる方向です。

研修・相談体制の整備義務

仕事と介護の両立支援に関する研修・相談窓口の設置が事業主に義務付けられました。会社の人事部門に「介護の相談がしたい」と申し出れば対応してもらえるようになっています。

💡 ポイント

2025年4月の改正は「介護離職を防ぐための法整備」と位置づけられています。会社に申し出れば制度を使える環境が広がっていることを前提に、「辞める前に必ず人事部・労働組合に相談」を実行してください。

仕事を続けながら介護する|使える制度

介護休業(最大93日・給付金あり)

  • 対象家族1人につき通算93日取得可能
  • 3回まで分割可能
  • 雇用保険から休業前賃金の67%が給付される(介護休業給付金)
  • 事業主には1年以上勤務(または労使協定で定めた要件)等の要件あり

介護開始直後の体制構築期間(介護保険申請・サービス選定・住居の調整等)に集中して使うのが定石です。

介護休暇(年5日/対象家族2人以上は10日)

  • 1日または時間単位で取得可能
  • 有給扱いかは会社による(無給でも法的に問題なし)
  • 通院付き添い・ケアマネ面談・ショート送迎などのスポット利用に

短時間勤務制度(93日とは別枠で利用可能)

  • 1日の所定労働時間を6時間程度に短縮
  • 利用開始から3年以上、2回以上の利用可
  • 給与は時短分減額されるが、社会保険・厚生年金は維持

所定外労働の制限・時間外労働の制限

  • 残業免除・月24時間/年150時間以内に制限
  • 請求すれば原則として認められる

深夜業の制限

22時〜翌5時の労働を制限してもらう請求権。シフト勤務の方には有効。

転勤への配慮

介護を行う労働者の転居を伴う配置転換について、事業主に配慮義務があります。「介護中の転勤は無理」と申し出る根拠になります。

介護休業・介護休暇・有給の違い|会社への伝え方と書類テンプレ【2026年版】
介護休業・介護休暇・有給の違いと使い分け、申請手順、上司への伝え方の例文、93日の使い方を介護福祉士が解説。両立支援制度を知っているだけで、100万円単位の差がつきます。

仕事と介護の両立を支えるサービス再設計

働きながら介護する5つの軸

主な手段
① 平日昼間のカバー デイサービス・通所リハビリ
② 早朝・夜間のカバー 訪問介護・夜間対応型訪問介護
③ 出張・連休のカバー ショートステイ
④ 自宅環境の整備 福祉用具・住宅改修
⑤ 急変時のカバー 訪問看護・在宅医療の24時間体制

ケアマネに「働き方」を伝える

ケアプランは家族の生活サイクルを踏まえて組まれるため、「平日9時〜18時は会社にいる」「月1回出張がある」「シフト勤務で平日休みが不規則」といった情報をケアマネに具体的に共有してください。

遠距離介護の組み立て方

離れて暮らす親の介護では、現地サービスの最大化+家族の役割分担が鍵。

  • 地域包括をハブに、現地のケアマネ・訪問介護を組成
  • 本人の状態をリアルタイムで把握する見守り機器・連絡帳アプリ
  • 月1〜2回の帰省で対面のケア
  • 兄弟との分担(経済的支援・情報共有・現地対応)
親が倒れた直後にやることチェックリスト|入院〜退院〜介護準備の完全ロードマップ
「親が倒れた」と連絡を受けたとき、何から動けばいいかわからない方へ。0〜24時間・入院中・退院前・退院後30日以内の4フェーズでやることをチェックリスト形式で解説。介護福祉士7年の経験をもとに、最初の1か月で押さえるべきポイントをまとめました。

「離職するしかない」と感じたときに見直すこと

介護休業を最大限活用したか

「会社に迷惑だから」と取らずに離職する方を見ますが、介護休業は労働者の権利です。給付金もあり、休業期間中の社会保険料負担も軽減される制度設計になっています。

短時間勤務に切り替えたか

「フルタイムは無理だが完全離職もしたくない」場合、短時間勤務が最適解。給与は減りますが、社会保険・厚生年金が維持され、将来年金への影響を抑えられます。

サービスを十分に組み合わせたか

家族で抱えていることが、外部サービスで肩代わりできないか。デイ・ショート・訪問介護を本気で組み合わせると、ほとんどの在宅介護はフルタイム勤務と両立できます。

兄弟との分担を再協議したか

主介護者一人で全部抱えるのは合理的でない。経済的支援・現地対応・遠隔の情報共有など、兄弟・親族との役割分担を再協議してください。

会社の制度を完全に把握したか

会社独自の介護支援制度(介護積立休暇・介護一時金・テレワーク制度等)が整っている企業も増えています。就業規則・人事部・労働組合に確認を。

副業・複業の選択肢はないか

正社員を辞める前に、副業可・複業可の企業への転職を検討する余地もあります。フルタイム正社員→時短正社員→契約社員→副業フリーランスというグラデーションで、収入と社会保険を維持する道を探ってください。

本当に離職を選ぶ場合の備え

あらゆる選択肢を検討しても離職が最善と判断する場合は、次の備えを確実に。

失業給付の受給

離職理由が「介護のための退職」なら特定理由離職者として、失業給付の給付制限なし・所定給付日数の優遇を受けられる可能性があります。ハローワークで離職票を提出する際に、必ず「介護離職」と申告してください。

健康保険の選択

  • 任意継続被保険者制度(最大2年間)
  • 国民健康保険
  • 家族の健康保険の被扶養者になる

3つの選択肢を保険料で比較し、もっとも安い選択を。

年金の任意加入・付加年金

国民年金への切り替え後、付加年金(月額400円)の利用、国民年金基金など、将来年金を補強する仕組みを使える範囲で活用。

介護期間後の再就職に備える

  • 資格取得(介護職員初任者研修・実務者研修・介護福祉士など)
  • 地域の介護職有効求人倍率は高水準で推移
  • 離職中の能力開発・職業訓練の活用

経済的シミュレーション

離職前の世帯年収・離職後の見込み収入・介護費用・将来の生活費を表計算で整理。5年後・10年後の家計が成立するかを必ず確認してください。社会福祉協議会の生活福祉資金貸付や、ファイナンシャルプランナーへの相談も活用を。

介護費用の総額シミュレーション|在宅と施設で月いくら違うか【2026年版】
親の介護にいくらかかるのか?介護福祉士が、要介護度別の月額・在宅と施設の総額・公的支援で減らせる金額・払えなくなったときの対処までを2026年最新情報でシミュレーション解説します。

介護福祉士から見た|離職を防げた家族の共通点

介護福祉士 SEDO(経験7年)

「離職するしかない」と相談に来られたご家族のうち、半分以上は制度とサービスを十分に使い切れていない状態でした。介護休業を取らずに有給で凌ごうとしている、デイサービスを週1回しか入れていない、ショートステイを使っていない――そういうケースが少なくありません。

離職を防げたご家族の共通点は次の3つでした。

  1. 会社に早期に相談:介護休業・短時間勤務・テレワーク等の制度を最大限活用
  2. サービスを最大化:ケアマネに「働きながら介護したい」と明確に伝え、ケアプランを生活サイクルに合わせて組む
  3. 家族会議で分担を確定:兄弟との役割分担を文書化し、長期戦に備える

逆に離職を選んだご家族の多くは、後年「もっと相談すればよかった」「制度を知らなかった」と振り返っていました。「辞める」前にやれることはまだあります。会社の人事部、ハローワーク、社会保険労務士、ケアマネ――いろいろな専門職に相談してください。

まとめ|「辞める」より「変える」を最初に試す

本記事の要点を整理します。

  • 介護離職は年収6〜7割減・キャリア・年金・健康に長期影響
  • 2025年4月改正で会社の両立支援義務が拡充された
  • 介護休業(93日・給付金67%)・介護休暇(年5〜10日)・短時間勤務をフル活用
  • ケアマネに「働きながら介護したい」と明確に伝える
  • 離職前に会社の人事部・労働組合に相談
  • 離職を選ぶなら失業給付・健康保険・年金の備えを確実に

「辞めるか続けるか」の二択ではなく、働き方を変える・サービスを増やす・家族で分担するを組み合わせるのが、家族と本人の両方を守る現実的な選択です。「辞める」前に、必ずもう一段階の検討をしてください。

よくある質問

Q:介護離職するとどのくらい年収が下がりますか?
A:総務省や民間調査の集計では、介護離職した方の再就職時の平均年収は離職前の60〜70%程度に下がるという結果が一般的です。男性で約400万円→260万円、女性で約280万円→180万円というデータもあり、年収減は介護期間中だけでなく再就職後の生涯にわたって響きます。さらに非正規雇用での再就職率が高いため、社会保険・退職金・年金の積み上げにも長期的な影響が出ます。離職を選ぶ前に、介護休業・短時間勤務など仕事を続ける選択肢を必ず検討してください。

Q:介護休業給付金はいくらもらえますか?
A:介護休業期間中は雇用保険から休業前賃金の67%が給付されます(最大93日、対象家族1人につき3回まで分割可)。たとえば月給30万円なら月額約20万円が休業給付として支給される計算です。所得税・住民税はかかりますが、健康保険料・厚生年金保険料は休業期間中の負担が軽減または免除される仕組みがあります。介護休業給付金は介護開始から早めに使う方が在宅介護の体制構築に充てやすく、後で取れなくなる前に活用してください。最新の給付率・要件はハローワークでご確認ください。

Q:2025年4月の育児介護休業法改正で何が変わりましたか?
A:2025年4月の改正で、介護に関連する事業主の義務が拡充されました。主な変更点は、①介護に直面した労働者への両立支援制度の個別周知・意向確認の義務化、②介護に直面する前の早い段階(40歳到達時)からの情報提供の努力義務、③介護のためのテレワークの努力義務、④仕事と介護の両立支援に関する研修・相談体制の整備義務、です。これらにより、企業側が介護中の社員を積極的にサポートする体制づくりが求められるようになりました。詳しい内容は厚生労働省パンフレットや会社の人事部門でご確認ください。

📚 出典・参考

・厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」
・厚生労働省「育児・介護休業法改正のポイント」(2025年4月施行)
・厚生労働省「介護休業給付金」関連通知
・総務省「就業構造基本調査」
・厚生労働省「仕事と介護の両立支援」ガイドライン
・各地域ハローワーク/都道府県労働局
※雇用・労働関連の制度は2026年4月時点の一般的な解説です。最新の運用はハローワーク・労働局・社会保険労務士・会社の人事部門で必ずご確認ください。

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