「老健は3か月で出ていかないといけない」「在宅復帰って何を準備すればいいの?」――介護老人保健施設(老健)の退所が近づいたご家族からよく聞く声です。
老健は在宅復帰を目的としたリハビリ中心の施設であり、特養のように終身入所する施設ではありません。利用者と家族が安心して在宅生活に戻るためには、退所前の準備と退所後の体制づくりが何より重要です。介護福祉士として現場で見てきた実例をもとに、押さえておくべきポイントをまとめます。
在宅復帰とは?老健の役割を整理
老健は「在宅復帰のための中間施設」
介護老人保健施設は、病院と自宅の中間に位置づけられる施設です。入所期間は原則3〜6か月で、リハビリ・医療的管理・栄養指導を組み合わせ、自宅生活へ戻れる状態を目指します。
2024年介護報酬改定で強化された在宅復帰機能
2024年の改定により、在宅復帰率の高い老健ほど報酬が上がる仕組みが強化されました。施設側も在宅復帰を本気で進める方針になっており、家族側もそれに合わせた準備が求められます。
退所前に家族が準備すべき5つのこと
住宅環境の整備
- 段差解消(玄関、浴室、トイレ)
- 手すりの設置(廊下、階段、浴室)
- 滑り止めの敷設
- 介護ベッドの配置スペース確保
住宅改修費は介護保険で上限20万円まで(自己負担1〜3割)給付されます。退所が決まったら早めに着手してください。
ケアマネ選定と在宅サービスの調整
老健入所中はケアマネ業務を施設が行いますが、在宅復帰後は居宅介護支援事業所のケアマネに切り替わります。退所2〜4週間前に新しいケアマネを選び、ケアプランを準備してもらいます。

訪問サービス・通所サービスの開始準備
- 訪問介護(ヘルパー):身体介護、生活援助
- 訪問看護:医療管理、健康観察
- 通所リハビリ:機能維持、社会参加
- 訪問入浴:在宅での入浴困難時
これらは退所日にすぐ稼働できるよう、事前に契約・スケジュールを確定させます。
福祉用具レンタルと購入
退所と同時に必要となる福祉用具を、ケアマネと相談して手配します。介護ベッド・車いす・歩行器はレンタル、ポータブルトイレ・入浴補助具は特定福祉用具販売(年間10万円まで保険適用)で購入が一般的です。
家族の役割分担と緊急時連絡網
主介護者を1人に固定すると、その人が倒れたとき体制が崩壊します。主・副・経済支援担当のように分担し、夜間・休日の緊急連絡先と対応者を決めておきます。
在宅復帰後に陥りがちな3つの課題
課題①:本人の生活意欲が下がる
老健ではリハビリで活発に動いていた方が、自宅に戻ると外出機会が減って急速に活動量が落ちることがあります。通所サービスで定期的な外出機会を確保することが対策になります。
課題②:家族の介護負担が一気に増す
「思ったよりも介護量が多かった」というのは退所後あるあるの後悔です。サービスの量は退所直後を多めに設定し、慣れてから調整する形が現実的です。
課題③:医療的処置への対応
胃ろう、酸素、たん吸引、インスリン注射などがある場合は、訪問看護・在宅医を必ず確保。家族のみで管理しようとするとトラブルにつながります。
介護福祉士から見た|在宅復帰がうまくいくご家族の特徴
介護福祉士 SEDO(経験7年)
退所前カンファレンスから積極的に参加し、職員に質問を遠慮しないご家族は、ほぼ間違いなく退所後の生活が安定しています。
うまくいくご家族には共通点があります。
- 退所前カンファレンスに必ず参加する
- サービスの量を控えめにせず、最初は多めに入れる
- 本人の希望と家族の限界、両方を率直に伝える
- 「無理になったら施設へ」を選択肢として残す柔軟性
在宅復帰が難しいときの選択肢
本人の状態や家族の状況によっては、在宅復帰が現実的でない場合もあります。その場合は次の選択肢が現実的です。
- 特別養護老人ホーム(要介護3以上)への申込み
- 介護付き有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- グループホーム(認知症の方)


まとめ
在宅復帰は「退所日に向けた準備の総合力」で決まります。退所2か月前から動き始めるのが理想。住宅改修・ケアマネ選定・サービス契約・家族の役割分担を並行して進めれば、復帰後の生活はぐっと安定します。
▶ 次のステップ
・在宅介護の限界を感じたら → 在宅介護が限界だと感じたときに考えるべき選択肢
・施設の種類と選び方 → 介護施設の種類をわかりやすく解説
・ケアマネの選び方
よくある質問
Q:老健には何か月までいられますか?
A:介護老人保健施設は原則3〜6か月で在宅復帰を目指す施設です。延長は可能ですが、リハビリ後の在宅復帰が前提のため、入所期間が長期化すると施設側から退所相談を受けることがあります。2024年の介護報酬改定で在宅復帰機能が強化されました。
Q:在宅復帰のために住宅改修はいくらまで保険適用ですか?
A:介護保険の住宅改修費は上限20万円までで、自己負担は所得に応じて1〜3割です。手すりの設置、段差解消、滑り止め、引き戸への変更などが対象になります。退所が決まったら早めに着手してください。
Q:在宅復帰が難しい場合の選択肢は何がありますか?
A:特別養護老人ホーム(要介護3以上)、介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホーム(認知症の方向け)が選択肢になります。本人の状態と家族の状況、経済力に応じて選んでください。
📚 出典・参考
・厚生労働省「介護老人保健施設の概要」
・厚生労働省「2024年度介護報酬改定の概要」
※本記事の制度情報は2026年4月時点。



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