「特養は要介護3からで入れない、でも家での認知症の介護はもう限界で……どこを頼ればいいんでしょうか」
ある日、認知症のお母様を介護する息子さんから、行き詰まった様子で相談がありました。要介護2、ひとり歩きで目が離せず、夜間も落ち着かない。在宅は限界だけれど特養はまだ入れない——。そんなご家族にとって、有力な選択肢になるのが認知症グループホームです。
グループホームは「認知症の人が、少人数で・家庭的に・なじみの関係の中で暮らす」ことを大切にした施設。けれど、特養や有料老人ホームとの違いが分かりにくく、「どう選べばいいのか」と迷う方が多いのも事実です。
本記事では、介護福祉士として認知症ケアの現場に長く関わってきた経験をふまえ、2026年6月時点の情報に基づいて「グループホームとは何か」「特養・有料との違い」「入居条件と費用」「見学のチェックポイント」「申し込みの流れ」「看取り・退居の注意点」を整理します。費用・制度は目安です。詳細は各施設・市区町村窓口・地域包括支援センターで必ず確認してください。
グループホームとは|認知症の人の「家庭的な共同生活」
グループホームの正式名称は「認知症対応型共同生活介護」。認知症の高齢者が5〜9人(1ユニット)の少人数で、専門スタッフの支援を受けながら、家庭的な雰囲気で共同生活を送る地域密着型の介護施設です。
- 入居者が役割を持って料理・洗濯・掃除などの家事に参加
- なじみの環境・人間関係の中で、認知症の進行を穏やかにすることを目指す
- 1ユニット最大9人と少人数なので、一人ひとりに目が届きやすい
- 個室が基本で、プライバシーが保たれる
「大きな施設で大勢に紛れる」のではなく、「小さな家で顔なじみと暮らす」イメージ。認知症の方が混乱しにくく、落ち着いて過ごせるよう設計されています。

特養・有料老人ホームとの違い|一覧で比較
「どの施設が合うのか」を判断するには、まず違いを押さえることが大切です。
| グループホーム | 特別養護老人ホーム(特養) | 介護付き有料老人ホーム | |
|---|---|---|---|
| 対象 | 認知症の診断が必須・軽〜中度中心 | 原則要介護3以上・重度も可 | 認知症でなくても可・幅広い |
| 規模・雰囲気 | 5〜9人の少人数・家庭的 | 大規模・多床室〜個室 | 施設により様々 |
| 運営 | 地域密着型(同じ市区町村の住民が原則) | 社会福祉法人・自治体等(公的) | 民間 |
| 費用 | 月12〜20万円程度 | 比較的安い(月8〜15万円程度) | 幅が大きい・高めも |
| 医療・看取り | 施設により差が大きい | 比較的手厚い | 施設により様々 |
ざっくり言えば、「認知症があり、まだある程度動けて、家庭的な環境で落ち着いて暮らしたい」ならグループホームが向いています。重度・医療ニーズが高ければ特養、費用に余裕があり手厚さや立地を求めるなら有料、という整理です。施設の費用全体を見比べたい方は、費用シミュレーションの記事も参考になります。

入居条件|4つの基本要件
- 医師から認知症の診断を受けていること
- 原則要支援2以上または要介護1以上
- 施設と同じ市区町村に住民票があること(地域密着型のため)
- 少人数での共同生活を送れる状態であること
注意したいのは、常時の医療的ケアが必要な方や感染症がある方は受け入れが難しい場合があること。また「地域密着型」のため、原則としてその市区町村に住んでいる人しか入れません(親を呼び寄せて入居、は基本できない)。この点は有料老人ホームと大きく異なります。
費用|月12〜20万円が目安(内訳と軽減)
費用の内訳
- 入居時費用:保証金・入居一時金として0〜数十万円程度(施設差大)
- 家賃(居住費)
- 食費
- 光熱費・管理費
- 介護保険の自己負担分(要介護度に応じた1〜3割)
- その他:おむつ代・理美容・日用品など
合計でおおむね月12〜20万円程度が目安ですが、地域・施設・要介護度で大きく変わります。
費用軽減の注意点
特養などで使える食費・居住費の軽減(特定入所者介護サービス費=補足給付)は、グループホームでは原則対象外です。一方で、高額介護サービス費(介護保険の自己負担が上限を超えた分の払い戻し)は受けられる場合があります。費用負担が不安な方は、公的支援の制度をまとめて確認しておきましょう。

見学のチェックポイント|「料金」より「関わり方」を見る
介護福祉士 SEDO(経験7年)
パンフレットや料金表では分からないのが、グループホームの「中身」です。私が家族に必ず勧めるのは、食事や日中活動の時間帯に見学すること。そこにスタッフと入居者の本当の関係が表れます。
見学時に見るべきポイント:
- スタッフの接し方:命令口調でなく、尊重した穏やかな関わりか
- 入居者の表情:穏やかで、居場所がありそうか
- 清潔さ・におい:排泄臭がこもっていないか
- 活動への参加:入居者が家事や活動に役割を持って参加しているか
- 医療連携:協力医療機関・訪問看護・急変時や入院時の対応
- 看取り・重度化:認知症が重くなっても住み続けられるか
- 職員の定着:入れ替わりが激しくないか
- 家族との連携:面会・連絡・情報共有の方法
とくに「認知症が進んだとき・医療が必要になったとき・看取りのとき」にどう対応してもらえるかは、後で退居を迫られて慌てないために必ず確認を。複数施設を見比べ、本人の人柄や状態に合う雰囲気かを家族の目で確かめてください。
申し込みから入居までの流れ
- 情報収集:地域包括支援センター・ケアマネに相談し、地域のグループホームをリストアップ
- 見学・問い合わせ:気になる施設を複数見学
- 申し込み・面談:申込書を提出、本人・家族の面談、状態の確認
- 入居判定:施設側が受け入れ可否・順番を判断(空き状況により待機も)
- 契約・入居:重要事項説明を受け、契約。ケアプランを作成し入居
人気の施設では空きが出るまで待機になることもあります。在宅介護が限界に近づく前に、早めに情報収集と申し込みを進めておくと安心です。施設探しの起点として、まず地域包括支援センターに相談するのが王道です。

入居後に気をつけたいこと|看取り・退居・医療
「住み続けられるか」を入居前に確認
グループホームは軽〜中度の認知症の方が中心のため、施設によっては認知症が重度化したり、常時の医療的ケアが必要になると退居を求められることがあります。「最期まで看てもらえると思っていたのに」と慌てないよう、看取り対応の有無・重度化したときの方針を入居前に書面で確認しておきましょう。
看取りに対応する施設も増えている
近年は、訪問看護・協力医と連携して看取りまで対応するグループホームも増えています。本人・家族がどこで最期を迎えたいか(在宅・施設・病院)を早めに話し合っておくことも大切です。看取りや人生会議(ACP)については、こちらの記事も参考にしてください。
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まとめ|認知症の親に「合う暮らし」を選ぶ
- グループホームは認知症の人が5〜9人で家庭的に暮らす地域密着型施設
- 特養(重度・公的)・有料(民間・幅広い)と違い、「認知症・軽〜中度・同じ市区町村」が基本
- 費用は月12〜20万円程度。補足給付は原則対象外、高額介護サービス費は対象になりうる
- 見学では料金より「スタッフの関わり方」と入居者の表情を見る
- 重度化・医療・看取りへの対応を入居前に必ず確認
- まず地域包括支援センター・ケアマネに相談し、早めに動く
施設選びは「立派さ」や「料金」ではなく、本人がその場所で穏やかに過ごせるかが一番の基準です。グループホームは、認知症の方にとって「もうひとつの家」になりうる選択肢。本人の人柄に合う場所を、家族の目で選んであげてください。費用や条件は施設・地域で異なるため、必ず各施設と市区町村窓口・地域包括支援センターで最新情報を確認しましょう。
▶ 次のステップ
・介護老人保健施設(老健)の使い方 → 介護老人保健施設(老健)の使い方完全ガイド
・介護費用の総額シミュレーション(在宅と施設) → 介護費用の総額シミュレーション
・介護費用が払えないときの公的支援 → 介護費用が払えないときの公的支援 完全ガイド
・看取り介護とACP(人生会議) → 看取り介護とACP
よくある質問
Q:グループホームとはどんな施設ですか?特養や有料老人ホームと何が違いますか?
A:グループホーム(正式名称:認知症対応型共同生活介護)は、認知症の高齢者が5〜9人の少人数(1ユニット)で、専門スタッフの支援を受けながら家庭的な雰囲気で共同生活を送る、地域密着型の介護施設です。入居者が役割を持って料理・洗濯・掃除などの家事に参加し、なじみの環境と人間関係の中で認知症の進行を穏やかにすることを目指します。特別養護老人ホーム(特養)との違いは、特養が原則要介護3以上で重度の方も含め幅広く受け入れ、医療・看取り体制が比較的手厚い大規模施設であるのに対し、グループホームは「認知症があり、ある程度自分で動ける軽〜中度」の方が中心で、少人数・家庭的なのが特徴です。有料老人ホームとの違いは、有料が民間運営で費用やサービスの幅が広く認知症でなくても入れるのに対し、グループホームは認知症の診断が必須で、原則として施設と同じ市区町村に住む人しか入れない(地域密着型)点です。
Q:グループホームの入居条件と費用はどのくらいですか?
A:主な入居条件は、①医師から認知症の診断を受けていること、②原則要支援2以上または要介護1以上であること、③施設と同じ市区町村に住民票があること(地域密着型のため)、④少人数での共同生活を送れる状態であること、の4つが基本です。重い医療的ケアが常時必要な方や、感染症がある方は受け入れが難しい場合があります。費用は、入居時に保証金・入居一時金として0〜数十万円程度(施設により幅が大きい)、月額は地域や要介護度により異なりますが、家賃・食費・光熱費・管理費・介護保険の自己負担分などを合わせて、おおむね月12〜20万円程度が目安です。住民税非課税世帯などの食費・居住費の負担軽減(特定入所者介護サービス費)は原則対象外ですが、高額介護サービス費の払い戻しは受けられる場合があります。金額は施設差・地域差が大きいため、必ず各施設と市区町村窓口で最新の見積もりを確認してください。
Q:グループホームを見学するとき、どこを見ればいいですか?
A:パンフレットや料金だけで決めず、必ず見学し、できれば食事の時間帯や日中の活動時間に訪れてください。チェックすべきポイントは、①スタッフが入居者にどんな表情・口調で接しているか(命令口調でなく、尊重した関わりか)、②入居者の表情が穏やかで、居場所がありそうか、③においや清潔さ(排泄臭がこもっていないか)、④入居者が家事や活動に参加しているか、⑤医療連携(協力医療機関・訪問看護・急変時や入院時の対応)、⑥看取りに対応しているか・認知症が重くなったときに住み続けられるか、⑦職員の入れ替わりが激しくないか、⑧家族との連絡・面会の頻度や情報共有の方法、です。とくに「認知症が進んだとき・医療が必要になったとき・看取りのとき」にどう対応してもらえるかは、退居を迫られて慌てないために入居前に必ず確認しておきたい点です。複数施設を見比べ、本人の人柄や状態に合う雰囲気かを家族の目で確かめることが、後悔しない選択につながります。
📚 出典・参考
・厚生労働省「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」関連
・厚生労働省「介護サービス情報公表システム」
・厚生労働省「地域密着型サービス」関連
・各市区町村「地域密着型サービス事業者一覧」
※情報は2026年6月時点の一般的な解説です。入居条件・費用・サービス内容は施設・地域により異なります。必ず各施設、お住まいの市区町村窓口、地域包括支援センターで最新情報をご確認ください。


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